日本の歴史を辿ると、日本を治めてきた有名な天皇の名前を目にすることがあるでしょう。そこで気になるのが、女性の天皇です。
女性の天皇が少ないと感じたことがある方もいるでしょう。そこで本記事では、女性天皇は誕生するのかを解説します。
歴史上の女性天皇や女系天皇との違い・女系天皇の問題点・愛子さまは即位できるのかもご紹介するので参考にしてください。
女性天皇は誕生する?
過去の天皇になった方を見ても、女性天皇は存在します。しかし、現代において女性天皇は誕生するのでしょうか。
そもそも天皇は、日本の天皇制に従っており、憲法上は日本の象徴的な立場です。主な役割としては、国事行為を行います。
しかし、天皇が国を支配することはありません。あくまでも日本の伝統や文化を守り、その象徴として国民の精神的な支えとなることに期待されています。
そのような天皇という立場ですが、過去の女性天皇の存在を見ると、今後も女性天皇が誕生することがあるのではと考える方も多いでしょう。
実際に、近年では女性天皇の導入を提言している声もあります。しかし、女性天皇の導入に全く問題がないわけではありません。
具体的にどのように女性天皇制を導入するのかを決めなければなりません。
また、女性天皇を導入するのであれば、男女平等に対する意識改革もさらに行っていかなければならないでしょう。
日本の歴史上には10代8人の女性天皇がいる
Embed from Getty Images女性天皇が今後誕生するかは大きな問題ですが、今後の女性天皇のことを考えるのであれば、過去の女性天皇についても学ぶことは非常に大切です。
実は過去に女性天皇として即位した方は、8人います。そして、どの方も10代で務めています。
ここでは、日本の歴史上で女性天皇を務めた8人の人物をご紹介します。
推古天皇
女性天皇として最も有名といえるのが推古天皇です。彼女は、33代目の天皇にあたり、日本の歴史上で最初に女性天皇を務めた方です。
当時、朝廷で権威を誇っていた蘇我馬子によって、32代目の崇峻天皇が暗殺されました。これにより、政治的に緊張状態が続き、天皇としても複数の男性候補者がいました。
しかし、蘇我氏の思惑もあり、天皇はすぐには決まらず政治はまとまらない状況だったため彼女が即位します。
彼女は蘇我氏一族を母に持ち、蘇我地と皇室との協力関係を保てる存在でした。政治的な安定を図るためにも、彼女は初の女性天皇として即位したのです。
皇極天皇
皇極天皇も女性天皇としては有名なひとりです。34代目の舒明天皇が退位した後、その皇后であった彼女が35代目天皇として即位しました。
当時、舒明天皇が崩御した後に、再び蘇我氏の策略によって後継者が決まらない状態が続いていたのです。
そこで、後継者が決まるまでの間ということで、中継ぎ的に即位したのが皇極天皇でした。
斉明天皇
37代目の天皇として即位したのも女性天皇でした。しかし、実は斉明天皇とは、皇極天皇のことです。
36代目の孝徳天皇が崩御した後、すぐに時代の天皇に変わる予定でした。当時次代の天皇として皇太子の地位にいたのは、34代目天皇の舒明天皇と中大兄皇子です。
また、孝徳天皇の皇子である有間皇子も有力候補として上がりましたが、中大兄皇子となりました。
しかし、中大兄皇子がすぐに即位するのが難しかったことから、中継ぎとして再び彼女が即位して務めました。
持統天皇
持統天皇も歴史を学ぶうえでよく聞く女性天皇の名前ではないでしょうか。彼女は41代目の天皇であり、40代目の天武天皇の皇后にあたる方です。
天武天皇との間には、草壁皇子がおり、有力な後継候補でした。しかし、腹違いの男子として大津皇子も有力な後継者候補といわれており、後継者争いが起こります。
そして、すぐに次代の天皇を決められない中で、草壁皇子が亡くなります。
これにより42代目の天皇に高継承させるための中継ぎ的な意味として彼女が即位することになりました。
元明天皇
43代目の天皇として即位した元明天皇も女性天皇のひとりです。彼女は38代の天智天皇の皇女でした。
彼女には、息子に42代目の文武天皇がいます。また、文武天皇には首(おびと)親王という息子がいました。彼女からすると孫にあたる存在です。
しかし、文武天皇が崩御した際、彼はまだ7歳と即位が困難な年齢でした。そのため、中継ぎ的な即位として、彼女が天皇を務めます。
元正天皇
元正天皇は44代目の天皇であり、女性天皇のひとりです。43代目の元明天皇の皇女でした。
2代続けて女性天皇となったのは、この当時もまだ首親王が即位できる年齢ではなかったためです。
また、即位に対しての反発も多かったようです。その中で、43代目の元明天皇が即位して9年ほどで心身の衰えを理由に、天皇の座を譲る意思を表明されました。
首親王は即位できないため、再び中継ぎ的な意味として、彼女が即位して天皇を務めます。
孝謙天皇
孝謙天皇は、46代目の天皇です。45代目の聖武天皇の皇女であり、兄妹には皇子もいました。
そのため、本来であればその皇子が46代目の天皇を務めるはずでしたが、夭折してしまいます。これにより、彼女は女性として初めての皇太子となり、その後即位しました。
女性の皇太子が史上では初めてのことですが、皇太子を経て即位した女性天皇も歴史上ただひとりという、非常に珍しい女性天皇です。
称徳天皇
称徳天皇は48代目の天皇であり、女性天皇のひとりです。そして、称徳天皇とは、孝謙天皇のことであり、彼女が再び即位して天皇を務めています。
彼女は、天皇の座を譲った後、上皇となりました。そして、47代目の淳仁天皇に譲位後、淳仁天皇を後ろ盾にする藤原仲麻呂と孝謙上皇の間で対立が激化します。
そして、藤原仲麻呂が反乱を起こすのですが、上皇側が勝利します。その結果、淳仁天皇は廃位し、孝謙上皇が天皇として再度即位することとなったのです。
明正天皇
女性天皇としては、明正天皇も有名でしょう。女性天皇の一人であり、109代目の天皇です。
当時、徳川幕府と朝廷との間で軋轢がありました。これにより、彼女の父の後水尾天皇が天皇の座から退くこととなります。
しかし、後水尾天皇の皇子たちは、全員夭折していたため男子への継承ができませんでした。
そのため、皇女である彼女が即位したのです。明正天皇は、異母兄弟である紹仁親王が即位できる11歳になってから譲位しました。
後桜町天皇
女性天皇として最後の方が、後桜町天皇です。117代天皇にあたります。116代目の天皇が崩御した時点では、すでに英仁親王という次の世継ぎも決まっていました。
しかし、年齢が5歳と年齢が非常に若くすぐに即位することが不可能であったため、中継ぎ的な意味で彼女が即位しました。
英仁親王が13歳になると、後桜町天皇は譲位します。
物議をかもしているのは「女系」天皇
歴史的に見ても、女性天皇の存在は大きいことをご紹介しましたが、ではなぜ現代では女性天皇が物議をかもしているのでしょうか。
実は物議をかもしているのは、女性天皇ではありません。女系天皇が物議をかもしているのです。
女性天皇は、歴史上でもいたことからその存在があり得ないわけではありません。
しかし、歴史を良く見てみると、実は女性天皇は全員中継ぎ的な意味でしか、即位していないのです。
これが非常に重要なポイントであり、女系天皇が問題視される理由です。女系天皇にすると、これまで受け継いできた天皇の血が正常に受け継げない可能性があります。
伝統を大切にしたいと考える方にとっては、これは大きな問題であるため、女系天皇は物議をかもしているのです。
女系天皇と女性天皇の違い
女系天皇が物議をかもしていることをご紹介しましたが、それでは女系天皇と女性天皇の違いは何なのでしょうか。
似ている言葉ですが、実は全く意味が異なります。女性天皇とは、性別が男性か女性であるかだけの問題です。
男性であれば男性天皇、女性であれば女性天皇と区別され、現在の天皇も男性天皇に区別されます。
一方、女系天皇とは天皇の血を父から受け継ぐのか、母から受け継ぐのかに関わるのです。
日本では、現状皇室典範により男系の男性天皇しか認められていません。そのため、男系の男性天皇しか誕生しません。
しかし女系天皇が問題ないとなれば、男系の男性天皇以外に、男系の女性天皇・女系の男性天皇・女系の女性天皇が誕生する可能性があります。
このように、女性天皇と女系天皇では、意味合いが全く異なるのです。
女系天皇の問題点とは?
先述したように、女性天皇と女系天皇の言葉の違いについてご紹介しました。それでは、なぜ女系天皇が問題となるのでしょうか。
それは、これまで続いてきた天皇の血が受け継がれない可能性があるためです。化学的な観点から見ると分かりやすいでしょう。
男性と女性とでは、性染色体が異なります。男性はXY、女性はXXという構造です。
そして、その二人の間に生まれる子供の性別は、父親と母親のXとYの染色体の組み合わせで決まります。
XYであれば男性であり、XXであれば女性です。男性の場合Y染色体があるため、必ずこれまでの血を受け継いでいることが分かります。
しかし女性の場合、その子まではXXであるため父親の遺伝子が含まれていますが、次の孫の代になると必ずしも受け継いでいるとはいえません。
これが非常に大きな問題といわれています。孫の代で、祖父の血を受け継いでいないということは、これまで受け継いできた初代天皇の血を受け継いでいないということです。
これまで受け継いできた伝統を止めてしまうため、女系天皇は問題視されています。
愛子内親王は天皇に即位できる?
Embed from Getty Images女系天皇の物議をかもしていると、名前が必ずあがってくるのが愛子さまです。愛子さまは、正式には愛子内親王といいます。
内親王とは、天皇の子と孫にあたる女性皇族のことであり、非常に地位が高いことを表しています。
そして、愛子内親王は天皇に即位できるのかという問題ですが、憲法上では難しいといえるでしょう。
先述した通り、日本の憲法上では、男系の男性しか天皇になれません。また、万が一過去の女性天皇のように、即位させるとなっても問題が生じます。
それは、天皇となったら結婚ができない問題です。過去の女性天皇からも分かる通り、一時的な中継ぎで即位する女性ばかりで、彼女たちは天皇の座にいる間は結婚をしていません。
結婚すると、跡継ぎの関係で大きな問題となってしまうためです。愛子さまにもそのような問題が起こるかどうかは分かりません。
しかし、それも踏まえて議論を進める必要があるでしょう。
女性は天皇に即位できないわけではない
女性天皇や女系天皇の議論はありますが、女性は天皇に即位できないわけではありません。女性が即位できないのは、あくまでも現行の憲法に基づく制度的制約だからです。
実際に、歴史上では女性天皇は存在しました。皇后と呼ばれる女性や摂政と呼ばれる女性が天皇の代理を務めた過去は確かにあります。
そのため、現在において女性が天皇に即位しようとするならば、憲法改正は避けて通れない道でしょう。
歴代の女性天皇をもっと知りたいなら
女性天皇と女系天皇は、似た言葉ですが全く意味は異なります。しかし、現在物議をかもしている女系天皇を考えるのであれば、一緒に合わせて考えるべき大きな問題です。
もちろん愛子さまが女性天皇に絶対になれないわけではありませんが、女性天皇として即位するには憲法改正は避けられないでしょう。
女性天皇の議論はこれからも続くでしょう。より一層理解を深めたい場合や、歴代の女性天皇を深く知りたいのであれば、本情報を参考に深堀してみてください。